人を大切にする経営 個を活かす3つの技術
![]() |
『ガリバー旅行記』のような入門書 |
『ガリバー旅行記』という本がある。多くの人が子供のころこの本を読み、小人の国や巨人の国での大冒険に、胸をときめかせたことだろう。一般に、子供向けの冒険活劇と思われているこの本だが、実は18世紀のイギリス社会を痛切に風刺した小説であり、政治学入門書であり、法律や宗教などさまざまな問題を提起した本であることはあまり知られていない。それゆえ、この本は読み手の教養や関心、立場によってさまざまな読み取り方ができ、子供から知識人、為政者まで、読む人がそれぞれ違った啓発を受け、楽しめる本なのである。
さて、本書『人を大切にする経営』についてである。私は池上孝一氏の著書を読むのはこの本で2冊目である。前回の『顧客理解の技術』でも感じたことだが、池上氏の著作は『ガリバー旅行記』と同じく、初心者、専門家、経営者、学生などいろんな立場の人が読み、それぞれに役に立つ本である。たとえば、人事などヒューマンリソースの専門家が本書を読むと、きっと取り立てて新しい概念の発見はないだろう。しかし、読み進めていくうちに、頭の中でどんどん発想がわき出してくるはずだ。なぜなら、本書には基本的なことが実に整然と整理されているからだ。だから、新発見は少ないけど、再発見や思考の連鎖が次々と起こり、頭が整理されていく。頭の中に引っかかっていた悩みが解決する。とてもありがたい本である。おかげで私も最後まで読み終えるのにずいぶん時間がかかってしまった(笑)もちろん本書は入門書としても良書である。
今朝、サッカーW杯優勝チームがイタリアに決まった。この1ヶ月間、睡眠時間を削って、テレビ中継を観ていた人にも本書はお勧めである。ブラジルやアルゼンチンではなく、何故、イタリアやフランスがW杯決勝に進んだか、その理由を本書から読み取ることができるからだ。勝ち上がるチームの組織と個人の力のあり方がきっと理解できると思う。
![]() |
”人材”を預かる全ての人に |
内容は、個人のマインドチェンジや組織文化の醸成、モチベーション向上のための施策など、
人事のソフト面の課題を解決するためのヒントがふんだんにちりばめられています。
さらに、様々な企業の取組み事例なども随所に盛り込まれており、
飽きずに読み進めることができます。
これらは、人事の担当者のみならず、職場を預かる管理者も、目を通しておきたい内容。
その一方で、人事制度の設計などのテクニカルな内容については乏しく、
そういった課題に直接取り組んでいる読者にとっては物足りなく感じるかもしれませんが、
本書の内容は、より従業員の心に響く厚みのある制度設計の土台になるものと思います。
「企業は人なり」を体現する経営者、管理者、人事の担当者にとってお勧めの一冊です。

